主任 松本

収益不動産の売却方法は、居住用不動産とは考え方が大きく異なります。
「家賃収入が出ているから、いつ売っても同じ」「不動産会社に任せれば問題ない」と考えてしまうと、本来得られるはずだった利益を逃してしまう可能性があります。

収益不動産は“収益を生む金融資産”として評価されるため、
売却のタイミング、方法、見せ方によって売却価格は大きく変わります。

本記事では、

  • 収益不動産の基本的な売却方法
  • 高く売るために必ず押さえるべきポイント
  • 売却によって得られる具体的なメリット
  • 失敗しやすい注意点

を体系的に解説します。これから売却を検討している方はもちろん、「まだ先だが情報収集しておきたい」という方にも役立つ内容です。

目次

収益不動産とは?売却前に理解しておくべき基本

収益不動産とは、家賃収入やテナント収入を得ることを目的とした不動産のことを指します。代表的な種類は以下の通りです。

収益不動産とは

一棟アパート・一棟マンション

投資用区分マンション

店舗・事務所ビル

テナント付き土地

これらの物件は、「住み心地」や「内装の美しさ」よりも、
どれだけ安定した収益を生み続けられるかが価値の中心になります。

そのため、売却時も

売却のポイント

現在の家賃収入

稼働率

将来の収益性

管理状況

といった数字やデータが、購入希望者(投資家)の判断材料になります。

収益不動産と居住用不動産の売却の違い

収益不動産の売却が難しいと言われる理由は、居住用不動産との評価基準の違いにあります。

項目居住用不動産収益不動産
主な購入者実需(住む人)投資家
評価基準立地・間取り・築年数利回り・収益性・将来性
価格決定相場重視収支計算重視
売却戦略見た目・印象数字と根拠

収益不動産では、「この物件を買うと、どれくらいのリターンが見込めるのか」を明確に説明できるかどうかが、売却成功の分かれ道になります。


収益不動産の主な売却方法

1. 不動産会社に仲介を依頼する方法

最も一般的で、多くのオーナーが選択する方法です。
不動産会社が売主と買主(投資家)をつなぎ、成約時に仲介手数料を支払います。

特に重要なのは、収益不動産を専門的に扱っている会社を選ぶことです。
居住用メインの会社では、収益物件の魅力を十分に伝えきれないケースがあります。


2. 不動産会社に直接買い取ってもらう方法

不動産会社が買主となり、直接物件を購入する方法です。

相続や資金繰りなど、「価格よりスピード重視」の場合に向いています。


3. 投資家へ直接売却する方法

知人や既存の投資家に直接売却するケースもありますが、

  • 適正価格の判断が難しい
  • 契約トラブルのリスクが高い
  • 税務・法務の知識が必要

といった理由から、専門家の関与なしで進めるのは注意が必要です。


収益不動産を売却する基本的な流れ

  1. 売却の目的を整理する
  2. 市場調査・価格査定
  3. 売却方法の選択
  4. 売却活動(仲介・買取)
  5. 買主との条件交渉
  6. 売買契約締結
  7. 決済・引き渡し

この流れの中で重要なのは、最初の「目的整理」と「価格設定」です。
ここを間違えると、売却期間が長期化したり、値下げを余儀なくされることがあります。


収益不動産を高く売るための重要な考え方

高く売却するために最も大切なのは、
「物件を良く見せること」ではなく、「投資価値を正しく伝えること」です。

そのためには、

といった情報を整理し、投資家が安心して判断できる材料を揃える必要があります。

収益不動産を高く売るための具体的なコツ

① 売却タイミングを見極める

収益不動産の価格は、物件そのものだけでなく、市場環境に大きく左右されます。

  • 金利動向
  • 投資家の資金余力
  • 不動産市況
  • エリアの再開発・人口動態

特に金利が低水準で推移している時期は、投資家の購入意欲が高まりやすく、売却価格も上がりやすい傾向があります。
「築年数が古くなる前に売る」「大規模修繕の前に売る」など、将来コストを意識したタイミング選びも重要です。


② 稼働率と家賃収入を安定させておく

投資家が最も重視するのは、購入後すぐに安定した収益が得られるかどうかです。

  • 空室が多い
  • 家賃滞納が頻発している
  • 管理状態が悪い

このような物件は、どれだけ立地が良くても評価が下がります。
売却前にできる範囲で、

  • 空室対策
  • 管理会社の見直し
  • 入居条件の調整

③ レントロールと収支資料を丁寧に整備する

収益不動産の売却では、感覚的な説明は通用しません。
以下の資料を整理しておくことが重要です。

  • レントロール(家賃・契約内容一覧)
  • 年間収支表
  • 固定資産税・管理費・修繕費
  • 修繕・設備更新履歴

これらが整っていると、投資家は安心して判断でき、
価格交渉でも主導権を握りやすくなります。


④ 無理なリフォームは行わない

居住用不動産とは異なり、収益不動産では見た目を良くするための高額リフォームは不要です。

投資家は、

  • 利回り
  • 回収年数
  • 将来の修繕費

⑤ 収益物件に強い不動産会社を選ぶ

高く売れるかどうかは、どの不動産会社に依頼するかでほぼ決まると言っても過言ではありません。

チェックすべきポイントは以下です。

  • 収益不動産の取扱実績が豊富か
  • 投資家とのネットワークがあるか
  • 利回りや収支説明に慣れているか
  • 売却後の税務・資産相談にも対応できるか

単に「大手だから」「近所だから」という理由で選ぶのは危険です。


収益不動産を売却するメリット

① 資産の入れ替え・組み替えができる

老朽化が進んだ物件を売却し、

  • より利回りの高い物件
  • 管理しやすい物件

へ乗り換えることで、資産効率を改善できます。


② リスクを軽減できる

収益不動産には、以下のようなリスクがあります。

  • 空室リスク
  • 修繕費の増加
  • 家賃下落
  • 金利上昇

売却は、これらのリスクを確定させずに回避する有効な手段でもあります。


③ 現金化による選択肢の拡大

売却によって得た資金は、

  • 新たな不動産投資
  • 金融資産への分散投資
  • 相続・贈与対策
  • 生活資金の確保

など、自由度の高い資産運用に活用できます。


収益不動産売却時の注意点

税金(譲渡所得税)に注意

売却益が出た場合、譲渡所得税が発生します。
所有期間によって税率が異なるため、売却前に必ず確認しておくことが重要です。


感情で価格を決めない

「これくらいで売りたい」という希望価格だけで進めると、

  • 売れ残る
  • 値下げを繰り返す

といった結果になりがちです。
市場と投資家目線を重視することが大切です。


Q1. 入居者がいる状態でも売却できますか?

A. はい。オーナーチェンジ物件として売却可能です。

Q2. 売却までの期間はどれくらいですか?

A. 物件条件によりますが、2〜6か月が一般的です。

Q3. 空室があっても売れますか?

A. 売却は可能ですが、価格や条件に影響します。

Q4. 査定だけの相談でも大丈夫ですか?

A. 問題ありません。情報収集段階での相談も多くあります。

Q5. 築年数が古くても売却できますか?

A. 可能です。収益性と立地次第で評価されます。

Q6. 高く売るために一番重要なことは?

A. 収益不動産に精通した不動産会社を選ぶことです。


収益不動産の売却方法を正しく理解することが成功への近道

収益不動産の売却方法は、

  • タイミング
  • 売却手法
  • 物件の見せ方
  • パートナー選び

によって結果が大きく変わります。

「まだ売るか決めていない」という段階でも、
一度現状を整理し、プロの意見を聞いてみることで、
将来の選択肢を広げることができます。

収益不動産は、売り方次第で価値が変わる資産です。
正しい知識と戦略を持って、後悔のない売却を進めましょう。

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